正直、安く見られることにはもう疲れています
「子どもたちのためなので」「予算がないので」「2時間だけなので」「交通費だけで来てもらえませんか」。育成年代の現場では、本当にこういう話が多いです。
もちろん、予算が厳しいチームや地域があるのも分かっています。僕も、行く意味があると思えば条件を下げますし、ほとんど持ち出しで動いたこともあります。
でも、それは僕が「今回は行こう」と決めたからです。安くやったことと、その金額が仕事の適正価格だったことは別です。ここは分けて考えてほしいと思っています。
2時間のクリニックでも、仕事は2時間では終わらない
依頼が来たら、対象年代や人数を聞く。チームの状況を確認する。内容を考える。主催者とやり取りする。必要なら映像も見る。そこから移動して、早めに会場へ入り、終わった後も質問や振り返りに対応する。
県外なら、一つのクリニックで一日がほぼ埋まります。場所によっては前泊や後泊も必要です。
それを「コートに立ったのは2時間だから、2時間分で」と言われると、仕事としては成り立ちません。
当日使っている知識は、当日に仕入れたものじゃない
現場で使っているのは、その日に思いついたドリルだけではありません。資格、研修、本、映像、海外の情報、他の指導者から学んだこと、それまでの失敗。全部の積み重ねです。
JBAのコーチライセンスにも受講料や登録料がありますし、学び続けるには時間もお金もかかります。もちろん、資格を持っていれば良い指導者、という話ではありません。
ただ、指導料を「その場で話していた時間の値段」だけで見るのは違うと思っています。
無料のクリニックがある。でも、指導が無料なわけではない
企業や団体が費用を負担して、参加者や主催チームの負担を抑えているクリニックもあります。逆に、講師料とは別に交通費や宿泊費を設定しているチーム向け指導もあります。
だから「他は無料ですよ」と言われても、その無料を誰が負担しているのかまで見ないと比べられません。
参加者が0円でも、指導者の仕事が0円になったわけではない。企業やスポンサーが代わりに負担している場合もあります。
適正価格に、全国共通の答えはない
「育成指導者なら一律○万円」と決めたいわけではありません。地域も違う。人数も違う。内容も移動も違います。
ただ、当日の指導時間だけでは決められない。準備、打ち合わせ、移動、交通・宿泊、資料、終わった後の対応、安全への責任。そこまで見て初めて、その依頼にどれくらい必要なのかが見えてきます。
たとえば2時間のクリニックでも、準備2時間、往復移動3時間、現地準備1時間、指導2時間、事後対応1時間なら、使っているのは9時間です。講師料2万円なら、経費を引く前でも1時間あたり約2,222円。そこから税金も保険も、学びに使うお金も出ていきます。
RBAは、「安く呼べる人」にはなりたくない
安いから呼ばれる。頼めば何でもやってくれる。遠方でも交通費だけで来る。そこをRBAの強みにするつもりはありません。
僕が届けたいのは、その年代に何が必要かを考えること。目の前の選手を見て、予定していた内容でも違うと思えば変えること。怪我のリスクも見ながら、終わった後に何かを現場へ残すことです。
これからは、指導料、事前準備、移動、交通・宿泊、必要な事後対応を、できるだけ分かりやすく分けます。遠方の依頼を、交通費だけで引き受けることもしません。
それでも、届けたい場所には行きたい
ここは誤解されたくありません。「お金がない地域には行きません」という話ではないです。
本当に届けたい場所なら、協賛を探す。参加人数で負担を分ける。スポンサーに入ってもらう。こちらで支援枠を作る。やり方はいくらでも考えられます。
ただ、その解決を毎回「じゃあ指導者が安くやればいい」で終わらせたくありません。
「子どものため」を、値切る理由にしないでほしい
ここが一番言いたいところです。育成年代だから安くていい。子ども相手だから、ほとんどボランティアでいい。その空気が当たり前になれば、学び続ける指導者ほど続けられなくなります。
生活が成り立たなければ、研修にも行けない。海外へ見に行くこともできない。教材にも投資できない。結局、その影響を受けるのは子どもたちです。
「子どものため」を本気で言うなら、良い指導者が学び続けながら、この仕事を続けられるところまで考えたい。僕はそう思っています。
高いか安いかより、「何に払っているのか」を見てほしい
有名だから高くていい。資格があるから高くていい。そういう話でもありません。
その金額に見合う準備をしているか。安全に責任を持っているか。その年代に合った内容なのか。終わった後に何かが残るのか。依頼する側には、そこを見て判断してほしいと思います。
同時に、指導者側も「自分には価値がある」と言うだけでは足りません。何をするのか。どれくらい時間を使うのか。何を残すのか。そこまで説明して初めて、仕事としての価格になると思います。
