練習試合で何を確かめたいのか、先に決める
RBAでは、練習試合を「練習してきたことを、相手がいる状況で試す場」と考えています。練習ではできていても、相手の速さや守り方が変われば、同じようにはいきません。そこで何ができて、何が難しかったのかを確かめ、次の練習に生かします。
例えば「今日はパスを大事にしよう」だけでは、何を見ればよいのかが曖昧です。「ドライブに対して守備が寄ってきたとき、空いている味方を見つけてパスできるか」まで具体的にすると、練習と試合、振り返りがつながります。見るべき点を絞るため、RBAでは試合のテーマを1〜2つにすることを提案しています。この数は運用上の目安です。
全員が出場して学べる機会を、事前に用意する
FIBA WABCのLevel 1指導者マニュアルでは、14歳未満の選手について、毎試合の前半と後半の両方で全員に出場機会を設けることを推奨しています。それより年上の子どもにも、毎試合、全員が出場することを勧めています。また、どのような考えで選手を交代させるのかを伝え、その方針を実行することも重視しています。[1]
これは、すべての年代・大会で全員を同じ時間だけ出場させるという競技規則ではありません。年齢や競技環境に応じた、指導上の推奨です。RBAでは、育成を目的とする練習試合において、参加する選手全員が自分の課題に取り組めるよう、出場する時間と役割をあらかじめ考えます。
試合終了直前に少し出ただけで、十分な経験ができたとは限りません。ボールに触れたり、守備で判断したり、うまくいかなかったプレーにもう一度挑戦したりする機会があったかを見ます。人数が多い場合は、参加人数や試合の本数を調整し、3対3を組み合わせる方法もあります。けがや体調、本人の意思を踏まえた調整は、その都度必要です。
今の身長や体格だけで、役割を決めつけない
WABCのU12向け指導では、全員がすべてのポジションを経験する考え方が示されています。RBAでは、U15でも年齢や習熟度を踏まえながら、ボールを運ぶ、パスでつなぐ、受ける、シュートまで持ち込むといった複数の役割を経験できるようにします。[1]
IOCの育成に関する合意文書では、成長や身体の成熟には個人差があり、将来の能力を予測することも難しいとされています。今、体格や身体能力で優位に立っていることだけを、そのまま将来性の評価にしてよいわけではありません。[5]
一方で、一つの競技に早くから専門化することを扱った研究を、そのまま「ポジションを固定すると必ず悪影響がある」という根拠にはできません。RBAが複数の役割を経験してもらうのは、学ぶ機会を狭めないためです。背の高い選手にもゴールから離れた場所で判断する機会を、ガードにもゴール付近でプレーする機会を用意します。
5対5でプレーに関われないなら、人数や条件を変える
WABCのミニバス指導資料では、3対3の利点として、ボールに関わる機会が増えること、1対1やスペースの使い方、ボールを持たないときの動き、対人守備を学びやすいことが挙げられています。練習として行う3対3は、国際大会の3x3ルールに合わせる必要はありません。[2]
de Souzaらは、11〜15歳の初心者男子16名を対象に、人数やコートの広さを変えてプレーを比較しました。条件によって攻撃・守備の行動に違いが見られましたが、1日の比較です。長く続けたときの成長や、女子・経験豊富な選手でも同じ結果になるかまでは確かめていません。[4]
現場では、何を学んでほしいかに合わせてゲームの人数や条件を選びます。試合でプレーする機会が少なかった選手には、チームの活動の中で補う方法を考えます。自主練習だけでは、相手や味方を見て判断する経験を十分に補えない場合があるからです。
- 守備の位置を見て攻める:1対1・2対2で、空いている方向、相手との間合い、止まるタイミングを見る。
- 守備が寄ってきた後の判断:2対1・3対2で、自分で攻めるか、空いている味方にパスするかを見る。
- パスを出した後の動き:3対3で、カットや位置の入れ替わり、味方との距離を見る。
- チーム全体の動き:4対4・5対5で、ボールと反対側の位置取り、守備への切り替え、相手の守り方への対応を見る。
見守る場面と、教える場面を使い分ける
WABCは、まずゲームを経験させ、質問を通じて選手の理解を確かめ、必要に応じてルールや条件を変えたり、個別に技術を教えたりする方法を紹介しています。プレーを見守りながら、必要な指導を行う考え方です。[2]
意思決定を扱うトレーニングのメタ分析では、6研究・計108名の結果をまとめ、戦術的な行動の改善が報告されています。ただし、研究ごとの結果には大きなばらつきがあり、技術を正確に実行する力については、比較対象のグループより改善したかどうかが明確ではありません。質問することだけの効果を調べた結果でもありません。[3]
RBAでは、選手が判断する前に、コーチがすべての答えを伝えてしまうことを避けます。一方、安全に関わることはすぐに伝え、ルールや課題が分かっていないときは短く具体的に説明します。「何が見えた?」「ほかにはどんな選択肢があった?」と聞き、必要な点を教えたうえで、もう一度試してもらいます。
プレーの結果と、そのときの判断を分けて見る
空いている味方を見つけてパスしたものの、ボールがずれてしまった。そんなときは、「パスを選んだ判断」と「パスを正確に出せたか」を分けて振り返ります。逆に、難しいシュートが入っても、入ったことだけで良い判断だったとは決めません。守備や味方の位置も含めて考えます。
これは、研究で使われている評価の分け方を参考にした、RBAの観察方法です。選手を選抜したり、将来の能力を予測したりするために検証された評価方法ではありません。
記録には、出場時間、そのテーマに関係する場面が何回あったか、そのとき何を選び、どこまでできたかを残します。出場時間や機会が違う選手を、成功回数だけで比べません。判断する場面がなかった場合は、失敗として数えず、「確認する機会なし」と記録します。
- 空いている味方へのパスがずれた:パスを選んだ判断と、距離・タイミングを分けて確認する。次の練習では、相手と味方が動く状況でパスを練習する。
- 守備が集まっている方向へ進み、ボールを失った:動き出す前に守備を見ていたかを確認する。次の練習では、相手を見て攻め方を選ぶ1対1・2対2を行う。
- パスを受けられる場所へ動いたが、ボールが来なかった:受け手の動きも記録する。次の練習では、パスを出す側と受ける側がタイミングを合わせる。
人数と試合時間から、出場の計画を立てる
例えば、12人で8分のゲームを6本行うと、試合時間は合計48分です。5対5なので、チーム全体の出場時間を足し合わせると、5人×48分=240分になります。12人に均等に割り振る場合の目安は、1人20分です。こうして、用意できる出場時間を先に把握します。
実際の交代は、選手の体調、休息、取り組んでいる課題に応じて調整します。20分という数字は、この条件で計算した目安であり、どの試合にも当てはまる基準ではありません。接戦になったときも、事前に考えた全員の出場機会を大切にします。必要に応じて、相手チームと相談し、試合の本数や少人数ゲームを調整します。追加する場合は、その日の疲労や休息も考慮します。
実力差が大きい試合では、点差に加えて、ボールを運べているか、相手を見て判断する場面があるかを確認します。ほとんど攻撃を始められない場合は、対戦の組み合わせ、守備を始める位置、人数などを相手と相談します。双方の選手が学べるよう、試合の目的と条件を事前に共有しておきます。
スタッフで共有したい、試合前の計画と試合後の振り返り
RBAの育成方針を、実際の練習試合でどう生かすか。次の試合を題材に、担当スタッフで計画と振り返りを共有することを提案します。男子・女子それぞれ、A4で1〜2枚程度を目安に、以下の内容をまとめます。準備の負担や提出時期は、担当者と確認して決めます。
提出時期の目安は、事前計画を試合3日前まで、振り返りを試合後3日以内とします。直前に決まった試合では、開始前に要点を共有します。この日数は運用上の提案であり、研究で最適とされている期限ではありません。
選手への質問例は、「守備が寄ってきたとき、どこが空いていた?」「次に同じ場面になったら、何を先に見る?」です。言葉にするのが難しい選手には、指差しやコートの図で説明してもらう方法もあります。
振り返りの記入例:テーマは「ドライブ後のパス」。守備が寄ってきた6場面のうち、空いている味方へのパスを選べたのが4回、パスが届いたのが2回。次の練習では、2対1を使い、動く味方にパスを出すタイミングを練習する。これは架空の例です。数回のプレーだけで、選手の能力や将来性を決めるものではありません。
- 試合のテーマ:1〜2つ。直近の練習内容と、試合で確かめたい場面を書く。
- 出場と役割の計画:参加人数、試合の本数、交代の目安、各選手に経験してほしい役割を書く。体調などで調整が必要な場合も記載する。
- 観察する項目:テーマに沿って3つ。「集中力」などの抽象的な言葉ではなく、実際に見て記録できる行動にする。
- コーチの関わり方:すぐに伝えること、いったん見守ること、選手に聞きたい質問を2つ用意する。
- 試合後の振り返り:予定と実際の出場時間・役割、確認できたプレー、十分な機会をつくれなかった選手、次の練習で取り組むことを書く。
根拠から言えることと、まだ分からないことを分ける
全員の出場機会を確保し、交代の方針を共有することには、WABCの指導上の推奨があります。少人数ゲームや判断を伴うトレーニングについても、研究で確かめられていることがあります。ただし、指導資料の推奨、研究結果、専門家の合意、RBAの運用方針は、それぞれ性質が異なります。
RBAは、これらの資料を参考にしながら、全員が学べる機会をつくり、現場の記録をもとに指導を見直します。試合で確かめたことを次の練習へつなげる。その積み重ねを、練習試合の大切な役割と考えています。
- 全員を同じ時間だけ出場させることが、どの選手にも最も効果的とは言い切れません。
- 年間20〜30試合という数が、すべての年代に最適だと示されているわけではありません。試合数に加え、出場時間、負荷、休息、振り返りも考えます。
- コーチの声かけや、技術の反復練習をすべてなくすことを勧めているわけではありません。
- 全員出場の方針は、すべての公式大会に共通する競技規則ではありません。
- 少人数・短期間の研究だけで、すべての選手の長期的な成長を保証することはできません。
