短絡的な練習は、なぜ生まれるのか
笛で動かす。決められたコースを走らせる。2on0で同じ形を何度も反復する。こういう練習は、決して全部が悪いわけではありません。
問題は、それしか選べなくなることです。練習がきれいに回ることと、選手が試合で自分でプレーできるようになることは同じではありません。
基礎を『正しいフォームをそろえること』だけで捉えると、練習はどうしても管理しやすい形へ寄っていきます。
1|勝たせることが、指導そのものになっていないか
目の前の試合で勝つことを最優先にすると、時間のかかる学びは扱いにくくなります。子どもに見させる。考えさせる。失敗させる。自分で直させる。どれも、すぐには揃いません。
そこで、答えを先に渡す。役割を固定する。動く場所を決める。短期的にはチームが整いやすくなります。
ただし、今勝ちやすいことと、その選手が数年後に自分でプレーできることは別です。
2|Fundamentalsを『型』だと思うと、練習は作業になる
基礎は、フォームの丸暗記だけではありません。ボールを扱う技術に加えて、何を見るか、相手との距離をどう取るか、どこに優位性があるか、いつ動くかまで含めて考えたいところです。
FIBA/WABCのMini-Basketball資料でも、10〜12歳ではバスケットボールの基礎を扱いながら、対人活動や自由度のあるゲーム、小人数ゲームを使い、選手の関与を増やす考え方が示されています。
型を整える時間は必要です。でも、型だけで終われば、試合の中で使う理由までは学べません。
3|『見る』を教えないと、判断は育ちにくい
守備を見て決める経験より、最初から答えを教える方が早い。だから、見なくても成功できる練習は作りやすいです。
右へドライブ。コーンで切り返す。決めた場所へパス。指示されたタイミングでカットする。うまくできても、そこに相手から読む情報がなければ、試合とは別の課題になっていることがあります。
見る力は、説明を聞いて身につくものではありません。見る必要がある状況の中で、繰り返し使う必要があります。
4|判断を減らすほど、コーチは指導しやすくなる
笛で全員を動かす。順番を決める。立つ場所を固定する。正解を一つにする。こうすると練習は整います。
ミスも減ります。説明もしやすい。保護者から見ても『しっかり練習している』ように見えやすい。
でも、コーチが決めることが増えるほど、選手が自分で決める回数は減ります。指示で整うことと、選手が育つことは分けて考えたいところです。
5|試合を分解できないと、練習もつながらない
試合では、ドリブルだけ、パスだけ、シュートだけが単独で起きるわけではありません。守備、味方、スペース、時間、得点差などの中で、一つのプレーを選びます。
ところが試合で何が起きているかを分解できないと、『今日はドリブル』『今日はパス』と技術が切れたまま並びやすくなります。
技術を切り出して練習すること自体は必要です。大事なのは、最後にゲームへ戻した時、何のための技術だったのかを確認できることです。
6|良いドリルかではなく、何を学ばせたいのか
難しそうなドリル。激しいドリル。道具をたくさん使うドリル。見た目だけなら、いくらでも作れます。
でも、練習で最初に決めたいのは『何を学ばせたいか』です。守備との距離を見るのか。ヘルプを見るのか。スペースを作るのか。タイミングを学ぶのか。
意図が先にあり、そのためにドリルを選ぶ。ドリルが先にあり、後から目的を探す。似ていますが、現場では大きな違いになります。
7|『できたように見える』を、成長と勘違いしない
練習中に成功した。言われた通りにできた。それ自体は悪いことではありません。
ただ、コーチの合図がなくなった時、守備が変わった時、味方の位置が変わった時にも同じように選べるか。そこまで見ないと、試合への再現性は分かりません。
代表性のある学習設計という考え方では、練習が競技で必要になる知覚と行動の関係をある程度保つことが重要だとされています。
8|『教えること』と『支配すること』を分ける
全部を言うことはできます。どこへ立つか、誰へパスするか、いつシュートするか。そうすればチームは揃いやすい。
でも、育成年代で残したいのは、コーチがいなくてもプレーできる力です。
教えないことが正解でもありません。必要な技術やルールははっきり教える。その上で、答えまで毎回奪わない。この線引きが大切です。
9|良い練習は、何を見るか・何を選ぶかがある
練習がスムーズに回ったかだけではなく、選手が何を見ていたか。何を選んだか。成功した理由、失敗した理由を本人が少しずつ分かるか。
この三つがあると、練習は『消化』から『理解』へ変わります。
コーチの問いも変わります。『何回成功した?』だけではなく、『何を見た?』『なぜそれを選んだ?』『次は何を変える?』。答えを急ぐより、思考を引き出します。
RBAがU12で残したいのは、認知→判断→実行
ミニバスは完成の場ではありません。育成の入口です。
見る。間合いを取る。優位性を感じる。タイミングを選ぶ。判断して実行する。技術は、その判断を実現するためにあります。
短絡的な練習は、子どもを揃えるには便利です。でも、将来につながる力まで残すには足りないことがあります。時間がかかっても、自分で見て、選び、修正できる選手を育てたい。それがRBAの考える育成年代の基礎です。
